梅便り 令和3年睦月18日

新型コロナウイルスの状況は横這い。今年の場合は梅や桜が特に人の心を慰めてくれることと思いつつ、本当の春は遠いように感じられます。当社の9月の大祭もできるなら一昨年までのように賑やかに斎行したいという切なる思いは持ちつつ、オリンピック・パラリンピックの開催の可否を基準に考えることとしました。
悔しいとも羨ましいとも思えますが、境内の梅は淡々と蕾を膨らませはじめ、駐車場入り口脇の「薄羽睦月(うすばむつき)」(飛梅の実生種)が2輪開きました。

梅便り 令和二年師走二十五日終い天神

依然感染拡大が止まらないコロナ禍で迎える新年に向けて、神社は複雑な心境のまま淡々と準備を進めています。そんな中、まだ背丈にも満たない梅ですが、新年を待ちきれずに開花しました。花弁の形から小梅ではないかと思われますが、まだ果実をつけたことはありません。梅は春の予感を知らせてくれますが、日本中、世界中が穏やかな生活に立ち返る日こそ春なのでしょう。神様は引っ越しません。あわてずに時期をみてご挨拶に参りましょう。

タウンニュース掲載コラム「宮司徒然」其の11 お屠蘇とオケラ

お屠蘇(おとそ)は現在、正月元旦に1年の厄除けと幸福を願って飲む縁起物のお酒とされているが、実は処方の難しいれっきとした漢方薬で、濃すぎれば反対に体調を崩すこともある。今ではティーバッグになって市販されているが、これは成分こそ間違いはないものの、身体に入れても薬効もなく勿論害もない文字通りの縁起物だ。大晦日に数種類の薬草を混ぜて酒に浸して作るが、その中にオケラの根が入っている。水分代謝が悪くむくみやすい人には効能があるとされている。また、オケラの新芽や若葉は山菜としても美味しくいただける。

川崎市寺家のオケラ

このオケラの根は違う利用もされている。京都の八坂神社(祇園社)は大晦日に「おけらまつり」という神事がある。焚き上げの中にオケラの根が入れられ、参拝者はその火種を専用の縄に移して、消えないように振り回しながら家まで持ち帰りその火で雑煮を作って家族で食べれば、1年間無病息災に過ごせるという。その昔は火種を振る人に限り電車内も咎められなかったというから、鉄道会社の寛大な措置もさることながら、よほど京都の人にとって大切な風習であることがわかる。オケラの薬効は無病息災や厄除けに派生し、良き風習として京都の人々の心に根付いている。
一方、都としてはるかに歴史の浅い東京には、さほどの伝統的な古い風習はない。それでも正月元旦に家族揃って御節を食べるとか、七夕飾りをするとか、うなぎを食べるとか、十五夜を眺めるとか、家族でできる習慣はたくさんあるが、はたして家族は集まっているのだろうか。各々が日々頑張り、時に集まって語り、また頑張り、また集まる。これを繰り返していくことが人間生活には大切なこと。孤独な人がいたなら集まれば孤独でなくなる。簡単ではなくともそういう社会が理想。世界各国にもあるように、日本にも集まるきっかけとなる良き風習がたくさんある。利用しない手はない。良き習俗が消えゆくことと、家族や狭い地域社会の繋がりが希薄になっていくことはあながち無関係とは言えない。

梅便り 平成30戊戌歳睦月29日

53年ぶりの大寒波と2年ぶりの積雪。当社境内の梅も面食らって怖気づいているようです。それでもようやく神符授与所前の思いのまま(鶯宿)、結衣、加賀系の早咲き白梅が数輪ずつ開いています。毎年一番早い鹿児島紅と白梅の枝が絡む金子稲荷前、もう少しで紅白の競演になるでしょう。
今週後半も雪の予報がささやかれています。道端の凍った残雪の上に降ると、ますます滑りやすくなります。くれぐれも足元にご注意ください。

早咲きの加賀と鹿児島紅

神符授与所前の思いのまま

手水舎横 結衣(小梅)

落雪注意

時ならぬ大雪で東京は大騒ぎでした。
境内も20㎝ほど積もり、今朝から慣れない雪掻きです。
当社は社殿、旧社殿ともに北向きで、夜半に銅板屋根から滑り落ちた雪が凍り、旧社殿は開門できなくなりました。まだ屋根に落ちていない雪が留まっています。ご参拝の皆様、正面中央で参拝をお願いいたします。両脇は危険です。

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タウンニュース掲載コラム「宮司徒然」其の8 鏡餅

日本人は言葉遊びも縁起かつぎも大好きな民族。例えば葦(あし)。日除けとして古来より葦を利用して作られるのは葦簀(よしず)。葦(あし)は「悪し」につながるから「良し」に転化した。千両と万両は赤い実の付き方が違い、千両は葉の上に、万両は葉の下に付く。万両の方が重いから垂れ下るという貨幣価値(重さ)で名付けられた両者は、共に縁起の良い木として庭木にされる他、千両は正月のめでたい生け花に利用されている。また、「死」や「苦」とつながる4や9は、旅館の部屋番号から除いてあったり、お刺身なども4切れにしないとか、「身が切れる」からと3切れを避けたりもする。年の瀬師走の29日に正月用の餅をつかないのは「九餅」が「苦持ち」につながるから。これに関連して新年用の神棚もこの日を避けて飾られる。また一夜飾りを避けて大晦日には飾らない。何でもかつぎやすい日本人は海外のものまで輸入。最近は13日の金曜日まで。
新年に飾る鏡餅は本来新年の幸福をもたらす「歳神様(としがみさま)」の霊威が宿る場所。今でも元旦に家族揃って歳神様の宿る鏡餅の前で御節(おせち)料理をいただく地域もある。御節料理とは、歳神様がいらっしゃる7日までの松の内に騒がしく家事をすることを避けるため、暮れに作る日持ちのする料理をいう。今でも洗濯や掃除などを含めた家事全般をしない風習があるのは、静かに歳神様に和んでいただくという意味が転じて、正月早々にせわしく働くと一年中そうなるという縁起かつぎだ。鏡餅や御節料理には言葉遊び満載。重ねた餅の上に橙(だいだい)を乗せるのはまんま「実りある代々を重ねる」。黒豆は「マメに暮らせるよう」、昆布巻きは「よろコブ」、海老は「腰がまがるまで長寿で」、数の子は「子孫繁栄」、錦糸卵は白と黄色を金銀に見立てて「商売繁盛」、etc・・・。鏡餅は歳神様がいらした場所だから、一般的な鏡開きの11日に金槌などで割り、雑煮やかき餅にして有難く霊威をいただき新年の活力にする。餅が乾いて硬くなってしまう前に包丁で切るのはNG。ましてや松の内であれば歳神様を切ってしまう。おそらく慌てて歳神様は逃げ出すが、その年の福徳も断ち切るとされ、雑煮用の餅は別に用意しておくことが必須だ。金沢や兵庫などの鏡餅には干し柿が棒に10個刺されて翼のように上に飾られる。(元々柿は幸福が来るという意味で「嘉来」と表す。) 両端の2個ずつが真ん中の6個より少し外に離し、「外はにこにこ(2個2個)、中はむつ(6つ)まじく」という微笑ましい言葉遊びで新年の幸せを願う。関西圏が丸餅なのも角が立たない丸い人間関係を望む故のこと。
今年国内では豪雨による堤防の決壊で多くの人々が被災した。箱根、阿蘇、桜島、口永良部島などマグマも活発で、箱根などは過度の風評により観光業は沈滞。TPPの合意で第一次産業は先の見えない不安にかられている。また、依然として紛争が治まらないイスラム圏は、シリアを中心にアメリカ、ロシア、トルコ、エジプト、イスラエル、クルド人などが、それぞれに敵対・牽制・友好・協力の図式を絡めて、どうにも解決できない様相。そんな矢先に起こったフランスへのテロ。そしてトルコによるロシア機の撃墜で、混迷する各国の関係はダェーシュ(IS)の思うつぼのような状況。(また大量殺戮やテロ行為をISのように発表しないボコ・ハラムは、実際にはIS以上に殺しているという話もある。) その間にも救うべきは生きるために母国から逃れるシリア難民。歴史上国境を接したことのない我が国がいつまでも傍観者でいるわけにもいかない。この世界情勢の流れの一部に安保改正もあって、残念ながらまだ生かされている国であることを再確認。終戦という表現が無理やり一般化されているが、沖縄の人々が訴えているように正しくは「敗戦」なのだ。
島国日本とアラブ諸国との国民性やイデオロギーの相違は大きい。そんな国々とも均衡を保たなければ日本の平和と生活は守れないのが現実だ。エネルギー自給率1割に満たない我が国がアラブ諸国に見限られたら経済は停止する。これまでの外交努力によってエネルギーを得ていることも忘れてはならないし、産油国への感謝も必要。日本の政治は利害ありきで感謝や謝罪を調整するから単なる駆け引きでしかない。とは言え物価の高いこの国で日々生きてゆくのも楽じゃないし、国の内外の情勢を考えたり行動したりは誰しもができるものではないからこそ、それを請け負う代表として議員がいるのに、一般庶民が出張って議事堂前で大騒ぎするような政治では代表として任せた意味もない。頑張ってほしいものだ。
災い全てをリセットすることは叶わなくとも、新年を迎えるにあたって個々に気持ちをリセットして自己を見つめ直すことは大切。歳神様を静かにお迎えして「外はにこにこ、中はむつまじく」ありたい。人も国も。

(タウンニュース社 コラム「宮司の徒然」其の8 掲載:平成27年12月)

茅の輪と焚き上げ場設置

いよいよ押し迫ってまいりました。大晦日の夕方より斎行される大はらへに向けて、茅の輪も設置され、茅の輪くぐり参加者により点火される焚き上げ場も作りました。某国のミサイル発射実験で不穏な国際関係の今年でしたが、新しき年は平和が戻りますよう願うばかりです。

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梅便り 28年12月30日

七五三が落ち着くと瞬く間に年の瀬になるように感じます。今年も残すところ明日一日だけ。明日の午後5時から斎行される師走おおはらへと茅の輪神事の準備も万全です。今日は総代さんたちが三が日用の特設賽銭箱の組み立てを奉仕してくれました。
ちょうど昨年の暮れに当社の梅が早咲きしてしまいタウン誌に報じられましたが、今年はお隣の菅原神社の紅梅が早咲きして報じられていました。当社の梅は背丈が1メートル足らずで鳥居前の階段の傍らでひっそりとたたずんでいます。勿論今年も早咲きでしたが、去年よりも花の数が多いのが気にかかります。地球の環境がますます変わって来ているのではないでしょうか。手放しでおめでたいとも言っていられないのかもしれませんね。

地球が、世界が、日本が、そして皆様の生活が、より良いものになりますよう祈念申し上げます。どうか皆様良いお年をお迎えください。

梅便り 睦月23日

暖冬のゲリラ雪の名残が境内のあちらこちらで氷のようになっています。今夜も少し降る予報が出ていますので、足元にはくれぐれも気を付けてください。
神符授与所前の思いのまま(品種:鶯宿)が数輪開きました。鹿児島紅の隣の加賀系白梅も開き、枝の交わる一画で恒例の紅白揃い咲きを撮影しました。確実に春が近づいています。境内駐車場の玉垣沿いにあるミツマタもようやくほぐれはじめました。まるで「まだ早いかなぁ?」と覗いているようです。id-252409187id-252409211id-252409258