宮司徒然 其の3「梅の話」 

ここ数日で境内に数本の梅がデビュー。境内に自宅があり、自宅周りの庭で梅などを種まきしたり接ぎ木したりして苗から育て、ある程度の丈になったところで境内デビューさせてきた。
接ぎ木とは、台木となる野梅や小梅の幹に守るべき品種の枝を接合して育てる方法で、有名な南高梅などもその方法で守られてきている。今回デビューしたのは接ぎ木の飛梅(とびうめ)と実生の飛梅亜種と加賀。梅は品種を守るため接ぎ木が最善の方法。一方種まきによる実生では変化が起きる。つまり、花には他の様々な梅の花粉も受粉する。そして同じ種族故に拒まない。できた梅の実には様々な梅の遺伝子が入り込み、発芽して育つうちにその特徴が顕われてくる。こうして梅の品種は増える。  飛梅は、御祭神菅原道真公の死後、京都の旧私邸の庭より一夜にして墓所である大宰府へ飛び移ったという伝説の梅で、現在も大宰府天満宮社殿前にあり、御祭神の御霊を和ませている。それを接ぎ木して京都の北野天満宮へ植樹。さらに接ぎ木で増やし全国の天満宮、菅原神社などへ。当社も北野天満宮よりいただいたものが境内の旧社殿前右側にある。そして今回、当社名誉宮司(父)が接ぎ木した飛梅が旧社殿前左側に。そのために移された真榊は迷惑だったかもしれないが、めでたく飛梅が一対になった。一方飛梅の実から発芽して育った飛梅亜種は、たった5年余りで3mに成長し幹も直径7~8センチ。昨年あたりから開花するようになったが、花の数が多いのと白の八重咲きであることは飛梅の特徴を保持。ただし、新たな性質として、①開花が境内のどの梅よりも早い。②花が小柄で花弁が薄い。③成長が早い。この3つが目立っている。特に開花時期が最も早いのは境内の梅にはない冬至梅(とうじうめ)系の特徴。では近所のどの梅かとつきとめるにも、大気中には盆栽の花粉も飛んでいるのだから特定は不可能。そもそも遠い近いもわからない。こうして実生による株は新品種となり、つまり私が命名しても差し支えはない。ただしその特徴を守っていこうとするならば接ぎ木をしていかなくてはならないから面倒だし、梅も望んでいるとは思えない。それ以前に名前なんて梅には関係ないのだろう。
すべての動植物はスピードこそ違うが、ひたすらミックスされていく。人間も例外ではない。それが自然。だから、極論と言われるかもしれないが、長い長い時をかけて人間も自然にミックスされていき、やがて地球上が一つの人種になって言葉も共有できたなら今ほど争わず対話できるはず。同じ種の生物が殺し合う愚かな行為もなくなるはず。そのためには環境を守り、改善し、地球を長生きさせなければならないと、より多くの人が意識して生活することが大切だと思う。紛争中の国民に言わせれば、平和ボケのぬるい島国ならではの考えと笑うだろう。それでも、かつて我が国が刻んだ愚かな殺し合いの歴史があればこそ、紛争は普通ではないんだと気づいてほしい。地球上すべてに平和が訪れた時、梅たちは慈しんでもらえてるだろうか。それとも、地球上に生物はもう・・・。

(タウンニュース町田・相模原版 コラム掲載日 2015/8/20)

コラム掲載のお知らせ

平成27年6月より地元のタウン誌「タウンニュース」(株式会社タウンニュース社)にコラムを掲載してまいりました。編集長からの条件は私にとってとても楽なもので、特に神社ネタでなくてもよいし、趣味の草花や虫の話でもよいし、ネタ切れしたら無理に書かなくてもよいとのこと。ギャラは当然発生しないし、つたない文章で欲しいなんておこがましいにもほどがある。あくまでも、自由に書かせていただけるだけで有難い。そのコラムも月に1~2度の掲載で、かれこれ3年目、36話にもなってしまったが、読むのを楽しみにしてくださる方々もいらっしゃるので、掲載してくれるうちはもうしばらく続けようと思っている。
木曜日に読売新聞と朝日新聞に挟まれるが、最近知った人が以前のも読みたいと言うので、Webでタウンニュース社のページを開けば読めるとお伝えしたものの、高齢の方はなかなかできないらしい。そこでタウンニュース社にブログにアップして良いものかと問い合わせたところ承諾をいただけた。季節に合わせて少しずつアップしていきますので、よろしかったらお暇な時にでも覗いてみてください。

梅便り 平成30戊戌歳睦月18日

三が日は天候にも恵まれて大勢の参詣者においでいただきました。おおよそ4万人の崇敬者が訪れて、御祭神菅原道真公をはじめ大綱・日枝の併祭神、また摂社にいらっしゃる神様たちもさぞお喜びになられたことと思います。空前の御朱印流行で若者の参拝者も増えたことは喜ばしいことですが、名誉の負傷とも言いましょうか、腱鞘炎と闘いながら、いやごまかしながらの日々です。その対策として、文字もすべて判にしたり、紙に作り置きしたりと、多くの神社が採用しているようですが、当社では今のところは、できる限り筆でその都度書いてさしあげようと思います。ですから、紙でのお渡しもしておりませんので、必ず朱印帳をお持ちください。ただし、松の内などは4名しかいない職員の内の1名(今は私)が終日机に張り付いて、祈願札と御朱印の書入れに終始するため、来訪者にきちんと挨拶もままならない状況になっていますから、これ以上増えたなら何らかの対策を講じざるを得なくなるのかもしれません。

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師走から新年にかけて列島に寒波が覆いかぶさり、各地で異例の大雪に見舞われるなど厳しい冬となっています。当社境内の梅の開花もだいぶ遅いようです。昨日今日と寒さが緩んだせいか、ようやく鹿児島紅と加賀系の早咲きが1輪ずつほころびました。春はゆっくり確実に近づいてきています。

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茅の輪と焚き上げ場設置

いよいよ押し迫ってまいりました。大晦日の夕方より斎行される大はらへに向けて、茅の輪も設置され、茅の輪くぐり参加者により点火される焚き上げ場も作りました。某国のミサイル発射実験で不穏な国際関係の今年でしたが、新しき年は平和が戻りますよう願うばかりです。

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夏越大祓への準備

早いもので平成29年も半年になろうとしています。都民ファーストの会が都議会議員選挙に良くも悪くも風を吹かせています。市政と国政は身近に感じられても、メディアで報じられることの少ない都政でしたが、近年の豊洲問題や東京五輪の話題でクローズアップされていることは、決して悪い事ではありませんが、小池都知事以前の知事はマイナス要因で目立っていただけに、豊洲とオリンピックが片付けば都政も安定するのかもしれません。
今年の前半は皆さまいかがでしたでしょうか。茅の輪くぐりは大祓いと共に行われますが、知らず知らずのうちに貯まった「半年の罪穢れ」を言うなればリセットする儀式です。良かったことは勿論、反省や悔いも振り返り、新たな気持ちの節目として茅の輪をくぐります。良いことしかなくてくぐる必要がないと思っても、人は多くの動植物の命をいただいて自分の命を保っています。神道ではそれらに対する感謝の気持ちを忘れない意味で、それもまた仕方がなくとも生きるための罪として捉え、「祓い」の意義が発生しています。
当社でも昨日「茅の輪作り」が氏子総代によって行われ、大祓いの人型を焚きあげる白木の井桁は本日私が製作しました。
大祓と茅の輪神事は30日午後5時より斎行いたします。500円以上お気持ちで身代わりである人型をお納めいただきましたら、記念に茅の輪守りをお渡しいたします。

梅便り 平成29丁酉歳弥生29日

世間が桜の開花でわくわくしてきたこの時期、梅の花は概ね終わって可愛らしい実が膨らみ始めています。手水舎裏の塒出錦はひと花で二~三個の実をつけます。花ひとつに雌しべが1本というわけではないようです。毎年たくさんのライスボール型の実をつけますが、渋味が強くて利用はできません。

草木便り 平成29丁酉歳弥生28日

関東山間部や箱根、富士などは四月も間近なのに時ならぬ降雪に見舞われ、このあたりも三月下旬とは思えないくらいの冷たい雨が降ったり、今年は春を出し惜しみされているように感じます。栃木県の那須では高校生が表層雪崩に巻き込まれ、尊い命が奪われる事故が起こりました。亡くなられた教員と若者たち、そのご家族には深くお悔やみ申し上げます。

春を待ちきれない様子のヒメスミレが楠木、梅、石灯籠の足下に張り付くように咲いています。端っこが好きなわけではなく、人や車につぶされない場所でしか根付くことができない草たちは、それでも安全な場所に根を張って一生懸命生きています。

梅便り 平成29丁酉歳弥生20日 

境内の梅は最後の楊貴妃と新種の1本が盛期となり、白加賀はもう結実しています。
新種の梅は豊後の種から発芽して育てた株です。豊後の花にどの梅の花粉が付いたのでしょうか。内巻きの花弁は小さ目で、花によって縁に紅をさしています。

楊貴妃

新種(豊後の亜種)

草木便り 平成29丁酉歳弥生20日 箱根空木の憂鬱

桜もいよいよ開花の予報日が迫り、待ち焦がれた春本番です。小さな富士桜が1本しかない当社境内ですが、枯れ木のように眠っていた木々の新芽が水瑞しく吹きだして春を知らせてくれます。3年前に鳥居前の階段脇に植えた箱根空木(ハコネウツギ)も目覚めたように芽吹き始めました。ただし残念なのは、紅白の花が咲き分けて美しいコントラストを魅せるハコネウツギですが、東北出身のかたがタニウツギと間違えてしまうことです。タニウツギは全体が薄紫で、東北、特に山形県地方ではお葬式で骨拾いに使う箸の素材にしたりするため、墓地に植えられるウツギで、別名「葬式花」や「死人花」と呼ばれるそうです。遠くから見ると当社のハコネウツギがタニウツギに見えてしまうのか、それともその類のウツギを一括りで縁起が悪いとしているのか、勘違いから境内にふさわしくないと言ってくださる方もいらっしゃいます。私の好きな花ですから、よくご覧になって愛でていただきたいものです。

梅便り 平成29年弥生11日

東北地方が未曾有の大震災に襲われてから今日で6年。依然福島の原発の影響は残り続け、まだまだ復興は遠く感じます。微力ながらも日待ち梅の販売利益を全て支援金として少しずつ送り続け、現在はありがたいことに品切れ状態。近く2000個が納品される予定です。紫外線で色が変化する素材を見つけ、それを当社の梅の形に加工してくれる業者を探して試作品が作れたのは5年も前のことです。その後、広島の豪雨や熊本地震など自然災害が起こりましたが、支援金を分けなかったのは日待ち梅が東北支援のために作ったものだからです。購入していただいた方々より、素材が弱く割れやすいという報告を受けておりましたので、近日納品されるものは少し厚くして強度を高めています。
いよいよ、当社境内で最も遅い梅が開花しました。背の高い「楊貴妃」と実から育てた「豊後しぼり」です。楊貴妃はその名の如く八重の花弁が波打つ妖艶な紅梅です。豊後しぼりは恥ずかしながら私が命名した梅で、一重の花弁は小粒で丸いふくら咲き、わずかに赤い筋も見えます。豊後梅の花に様々な花粉が付いてできた実ですから親は豊後とどなたなのでしょうか。種を守ることも大切ですが、こうして交配されてゆくのもごく自然なことです。来年、この梅が咲く頃、復興はどれくらい進んでいるでしょう。